母が施設に入り、実家は空き家になりました。
介護の費用に充てたいのですが、母は認知症で話がほとんど通じません。
子どもの私が代わりに売ることはできるんでしょうか。
親が認知症でも、家を売る道はあります。
ただし、子どもが親の代わりに売ることはできません。
売れるかどうかは、親本人に「売る」と判断する力が残っているかで決まります。
残っていないときは、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、その人が売ります。
この
- 今の
親の 状態で、 家を 売れるか どうかの 見当が つきます - 成年後
見を 使って 売るまでの 手順と 期間が 分かります - 家族が
知らずに 踏みやすい 落とし穴を 先に 避けられます
目次
認知症の親の家を売れるかは本人の判断能力で決まる
家を売る契約は、名義人の親本人が結びます。
このとき本人に、売るとはどういうことかを分かる力が要ります。
民法では、契約のときに本人にこの力(意思能力)がなかった場合、その契約は無効と定めています。
認知症と診断されたかどうかではなく、そのときの本人の状態で決まります。
条文は e-Gov 法令検索の民法 第3条の2で読めます。
軽い物忘れがある程度なら、本人が自分で売ることもあります。
話がほとんど通じない状態なら、本人が結んだ契約はあとで無効になるおそれがあります。
知恵袋には、まさにこの状態で迷っている人の相談がありました。
母(父はすで他界)は昨年脳梗塞で倒れてから今は高齢者医療施設に入所していて 年金だけでは足りず、実家(母の名義)を売却する事も検討中です。
認知がほとんどなく意思疎通が出来ません。 この場合どうすればよいでしょうか?
出典は Yahoo!知恵袋の投稿(2024年11月)です。
意思疎通ができない状態なら、家族の話し合いだけでは売れません。
次の成年後見の手続きが、ほぼ唯一の道になります。
家族が代わりに売るには成年後見の手続きが要る

成年後見は、判断する力が十分でない人に代わって、財産の管理や契約をする人を家庭裁判所が選ぶ制度です。
選ばれた人(成年後見人)が、親の代わりに家を売ります。
- 親の
住所地の 家庭裁判所に、 後見開始の 申立てを する - 家庭裁判所が
本人の 状態を 確かめ、 成年後 見人を 選ぶ - 成年後
見人が、 家を 売る 必要が あるかを 判断する - 住んでいた
家を 売る ときは、 家庭裁判所の 許可を もらう - 許可が
出てから、 買主と 売買の 手続きを 進める
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などです。
子どもは申し立てられます。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 申立ての手数料 | 収入印紙800円 |
| 登記の手数料 | 収入印紙2,600円 |
| 郵便切手 | 裁判所ごとに違う |
| 鑑定費用 | 医師の鑑定が要るときだけ |
出典は 裁判所「後見開始」です。
2025年に結論が出た申立てのうち、申し立ててから2か月以内に結論が出たものが71.1%、4か月以内が93.8%です。
医師の鑑定をしたのは3.4%で、鑑定費用は10万円以下が85.8%でした。
数字は 最高裁判所「成年後見関係事件の概況」令和7年によります。
同じ資料では、後見が始まった原因の61.3%が認知症でした。
申立ての動機の36.3%が「不動産の処分」です。
親の家を売るために成年後見を使う人は、珍しくありません。
成年後見人は家族が選ばれるとは限らない
申立てのときに、子どもを後見人の候補に書くことはできます。
ただ、誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。
2025年に選ばれた成年後見人などのうち、親族は16.4%、親族以外は83.6%でした。
弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることのほうが多いです。
専門職が選ばれると、家庭裁判所が決めた報酬を、親の財産から払います。
報酬の実例は 最高裁判所「報酬に関する実情調査の集計結果」に、親の預貯金の額ごとに載っています。
もう1つ知っておきたいのは、今の制度では、家を売ったあとも後見は続くことです。
家を売るためだけに始めて、売ったら終わり、という使い方はできません。
2026年6月に民法が改正され、成年後見は「必要な範囲で、必要な期間だけ」使える制度に変わります。
施行は2028年12月までの政令で決まる日で、それまでは今の制度のままです。
改正の中身は 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)」で確かめられます。
住んでいた家を売るには裁判所の許可がもう1つ要る

成年後見人が選ばれても、すぐに実家を売れるわけではありません。
親が住んでいた家を売るには、家庭裁判所の「居住用不動産処分の許可」が要ります。
今は施設や病院にいても、そこを出たら帰る家は「住んでいた家」として扱われます。
許可を取らずに売った契約は無効になります。
出典は 裁判所「居住用不動産の処分についての許可」と大阪家庭裁判所の案内(PDF)です。
許可の申立てには、不動産会社が作った査定書と、売買契約書の案が要ります。
つまり、買主と話を進めてから、契約の一歩手前で許可を取る流れです。
査定書を作ってもらう段階で、会社ごとの値段の差が出てきます。
施設にいる父名義の実家を売却しようと検討中です。 市街化調整区域の再建築不可物件で 買い取り価格大体250万円位の価値と言う不動産屋さんが多い中、500万円と言ってくれる業者さんがおります。
出典は Yahoo!知恵袋の投稿(2026年4月)です。
裁判所に出す査定書は、値段の根拠が書かれている必要があります。
2〜3社に査定を頼んで、根拠まで説明してくれる会社を選ぶと、許可の手続きも進めやすくなります。
認知症の親の家を勝手に売ると罰則はあるのか
家族が親に代わって、親の名前で契約書や委任状を書いて売ることはできません。
意思能力のない本人の契約は無効なので、売ったこと自体が取り消されるおそれがあります。
本人に無断で、親の名前を書いた契約書や委任状を作ると、刑法の私文書偽造にあたるおそれがあります。
条文は e-Gov 法令検索の刑法 第159条で読めます。
買主にとっても、あとで無効になるかもしれない家は買えません。
結局、成年後見を通すのがいちばん早い道になります。
相談できる先
どこに相談すればいいか分からないときは、次の順が進めやすいです。
- 家庭裁判所の
手続案内 申立ての書類や 費用を、 窓口や 電話で 聞けます - 市区町村の
成年後見の 地域包括支援センターなどで、相談窓口 制度を 使うか どうかから 相談できます - 司法書士や
弁護士 申立ての書類づくりを 頼めます。 後見人の 候補に なって もらうこともあります
親がまだ自分で判断できるうちなら、選べる方法が増えます。
元気なうちに信頼できる人を決めておく任意後見や、家族に財産の管理を任せる家族信託です。
よくある質問
認知症と
診断だけでは決まりません。
売る契約のときに、本人が売ることの意味を分かっているかで決まります。
兄弟が
申立ては1人でもできます。
ただ、後見人の候補や家を売ることについて、兄弟の考えを先に聞いておくと、あとで揉めにくくなります。
家を
売ったお金は親の財産で、成年後見人が親のために管理します。
施設の費用など、親のために使う形になります。
認知症の親の家を動かすときに今日できること
認知症の親の家は、子どもが代わりに売ることはできません。
親の状態によっては、成年後見と裁判所の許可を通して売ります。
- 親が
今、 売る ことの 意味を 分かる 状態かを 確かめる - 難しければ、
家庭裁判所の 手続 案内で 申立ての 書類を 聞く - 家の
査定を 2〜3社に 頼んで、 値段の 根拠を 見比べる
手続きには数か月かかります。
施設の費用の支払いが迫っているなら、早めに1つ目の相談をしておくと間に合います。

